子育て

大学に行く必要はないのか~WEBでの無料講義と学位について~

教育への意見やコメントというのは、比較的言いやすいものです。これは自身が教育を受けているからであって、体験しているのだから言いやすいというのもあるかもしれません。

さて、先日こんなツイートが回ってきました。

これはかなり言葉が抜けていますし、いくつか問題点があるように思います。ただ、イケハヤ氏が言うのは知識を習得するのは無料で出来るから日本の大学に行く必要がないのか、我が子に教育費をかけたくないのかは分かりません。単に自分に金は使うけど、子供に金を使いたくないだけかもしれませんが…。

さて、本記事では上記ツイートから下記の2つを主軸に、書いてみます。

  1. MITの授業を無料で受けられる?
  2. 大学に行く必要はあるのか?

もちろん私自身も小学生の子供を持つ親という立場のみであって、教育学、教育経済学や教育社会学などは専門ではありませんので、上記ツイートとレベル差はあまりない事は自覚しています。

MITのMicroMasters Programsは全てが無料ではない

MITの講義はオンラインで受けることができます。この「edX」にアクセスすると、MITだけではなく日本にいても聞いた事がある有名な大学の講義を閲覧することが可能です。

またMITはMicroMasters Programs(マイクロマスターズ)というプログラムがあります。これはオンラインで学び、さらに試験をパスし、優秀な成績を得るとMITのキャンパスで学びを継続し、修士号を目指す事が出来ます。

ただ、全てが無料ではありません。試験を受けるには試験料がかかり、所得に応じて試験料が定められています。またオンラインのみでは学位を取得する事はできません。

またオンラインで公開されているMITの授業は一部のみとなっています。

イケハヤ氏のツイートだと、MITの授業が色々と受けられるような印象がありますが正しく一部のみの授業がオンラインかつ無料で見ることが出来て、試験は有料。成績優秀ならMITに入学する権利を持つよという事です。

大学に行く必要と学位取得について

今回のイケハヤ氏のツイートの主張は、海外のトップクラスの大学の授業をオンラインで見られるから大学に行く必要がないというものです。

これを言い換えると知識は無料で身に付けられるから大学に行く必要はないと言えるかもしれません。さて大学は知識のみを身に付ける場所なのでしょうか?

もしかすると知識を身に付けるだけや受動的な学びしかしてこなかった、短絡的な思考で生きてきた人、大学では修学してこなかった人は、そのように考えるかもしれません。

大学とは何かというと研究者達が論じていますのでここでは詳細に触れませんが、大学は学問を修める場であり、先人たちや大学の研究成果も踏まえて体型的な教育が行われている場所でもあります。

また我が国の大学には、国(文部科学省)から大学の学士課程教育、つまり学部段階で共通として目指す学習成果の参考指針として「学士力」が示されています。学士力の詳細はここから見ていただきたいのですが次の4つが大きな枠です。

  1. 知識・理解
  2. 汎用的技能
  3. 態度・指向性
  4. 統合的な学習経験と創造的思考力

大学は単に知識を身に付けるだけではなく、上記を養成することも求められているのです。
単に知識だけ欲しい人はMITのオンラインでもいいかもしれませんけどね。

大学の学位は必要ないのか?

オンラインで授業を受けるだけと大学を卒業することの違いとして学位を取得できる事であるとも言えます。日本の大学の経済学部を卒業したのであれば「学士(経済学)」といった学位を卒業式の際に授与されているはずです。

この学位を持つという事は先ほど紹介した学士力を身に付け、その分野についての一定の知識や技能を持っている事を意味します。

日本の会社では、大学卒業だけを求められて、学位の分野まではあまり気にされない事もありますが、学位を持っているという事は、本来は自身に一定の能力や知識がある事の証明になるのです。

では学位は働くにあたって必要ないのでしょうか?これは働く業界や分野、そして職種に応じて異なるかと思いますが、例えば初任給のみの比較をすると厚生労働省の平成30年度賃金基本統計調査(初任給)の概況では最終学歴によって下記のようになっています。


出典:厚生労働省「平成 30 年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況

もちろん初任給のみで比較する事は正しくはありません。例えば大学卒の人は、大学に通っていた最低4年間で稼げたお金と学費などの機会損失をふまえ、生涯年収で見ないといけません。

そこで独立行政法人労働政策研究・研修機構が既存の労働統計から新しい統計指標を計算する方法と結果を紹介する資料集「ユースフル労働統計2018 ―労働統計加工指標集―」に学歴別の生涯年収があるのでこれを見てみます。なお下記の図は60歳までの生涯賃金で退職金を含まない数字です。

まずは全体ですが、あきらかに大学・大学院卒は高校卒や高専・短大卒を比較して生涯年収が高くなっています。

出典:ユースフル労働統計2018 ―労働統計加工指標集―

また興味深いのはこちらの企業規模別(男女別)です。


出典:ユースフル労働統計2018 ―労働統計加工指標集―

企業規模で見ると、従業員が100人未満は学歴であまり変わりませんが、100人以上、1000人以上となると大卒・大学院卒は生涯年収が高いようです。

言うまでもなく大学に行く意味はお金だけではありませんし、大学に行くということは多様な能力を身に付け、自身のキャリアプランの選択肢を増やす事でもあります。

子供に教育費などのコストをかけることについて

子供を持つようになって実感したのは、親がいかに教育のコストをかけてくれていたかという事です。小学校受験をしなかった我が家の子供でさえも、毎日宿題のチェックだけではなく、子供が小学校の勉強についていけるように学習プランを練り、塾やワークブック・さらに本などにも投資をし、教育に時間やお金などのコストが大きくかかります。

また文化資本自体があるかどうかも問題です。文化資本は生まれ持った環境から大きくは変えられませんので増やす事は難しいですが、それでも親として子供が多用な経験をし、自身で考えられる力を身に付ける為の投資が必要であると思います。

大学に行かなくていいというのはある意味、我が子の将来を考えていなくて、教育放棄なのかもしれないですね。